聖夜は恋の雪に埋もれて
 お昼休みも残り僅かというところで、鹿里君が私の席までやって来た。
「上園、こないだの約束、覚えてる?」
 あ、もしかして、お食事に連れていってくれるっていう、あれかな。
「お食事のこと?」
「そう、それ。俺のバイト先のお店でね」
 笑顔で鹿里君は続ける。
「でね。ついでって言っちゃ、何だけど、遊園地のパレードを見に行かない? 今、大評判でしょ」
「えっ、私と二人で?」
 びっくり。
 まさか、鹿里君から誘われるなんて、思わなかった。
「俺と二人じゃ、嫌? 一人で見に行くのも寂しいから、一緒にって思ったんだけど……」
 少し切なそうな様子になる鹿里君。
 でも……二人で行くのなら、奏がいい……。
「あ、うん……」
 私は口ごもる。
 すると、鹿里君は見るからにしょげた様子だ。
「迷惑だよね、突然ごめん……。もし、嫌なら、お食事だけでも……」
「えっと、そんな迷惑なんかじゃ……。じゃあ、遊園地も行こっか」
 鹿里君の落胆しきった様子を見ていられなくて、私は言った。
 すると、途端に表情が明るくなる鹿里君。
「いいの? やった! じゃあ、今度の土曜は、どう?」
 土曜は何も予定がないし、大丈夫。
 奏にも断られちゃったし、瑠璃もその日は忙しいって言うし。
「うん、大丈夫」
 私が答える。
「じゃ、決まりだね」
 明るく鹿里君がそう言ったところで、チャイムが鳴った。
 そして、瑠璃たちクラスメイトが続々と教室に戻ってくる。
「詳しい時間は、またあとで連絡するね」
 鹿里君はそう言うと、自分の席へと戻っていった。

 その後、メアドを交換した鹿里君と私。
 土曜のお出かけについて相談し、待ち合わせ時間と場所を決めた。
 まさか、奏以外の男子と二人っきりでデートするなんて……。
 でも、鹿里君だって、私を誘うことにそんなに深い意味はないと思うから、大丈夫かな。
 あんなにクラスの女子から大人気なんだし、私なんかを特別に誘ってくれたわけでもないと思うし。
 実際、瑠璃だって、こないだお食事に誘われていたからね。
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