聖夜は恋の雪に埋もれて
 そうこうしているうちに、パレードが始まったようで、私たちの目の前に、電飾で飾られた美しい車たちが姿を現す。
 周りから口々に、「綺麗~」などと声があがった。
 私も同じく、「うわぁ」と思わず声をあげる。
 それほどに、幻想的な光景だった。
「綺麗だなぁ」
 しみじみと言う鉄平君。
「うん……」
 ほんとに、言葉を失くしてしまいそうなほどに。
「パレードもだけど……麗もね……」
「えっ?!」
 びっくりして思わず、鉄平君の顔を見てしまう私。
 その顔は、電飾の光に照らされていた。
「好きだよ、麗。俺と付き合ってほしい」
「ええっ?!」
 これって……告白……?
 学校であれだけ人気者なのに、どうして私なんかに……?
 頭が混乱して、私は何も言えなかった。
 すでにパレードは、私の眼中になく……。

「いきなりすぎて、びっくりするよね、ごめん。でも、前々から好きだったんだ。一緒に来られてよかったよ」
 いつも以上の優しい表情で言う鉄平君。
「で、すぐに返事とか無理だよね。分かってるよ。考えといて」
「う、うん」
「せっかくのパレードなのに、気をそらせてしまってごめんね。うっとりと見つめる麗があまりにも可愛くて、つい……。ほら、まだまだパレードが続くから」
 鉄平君の言う通り、まだまだパレードは始まったばかりだ。
 でも……私は全然、パレードに集中できなかった。

 鉄平君のようなかっこいい男子から、「可愛い」と言われるなんて……たとえ、お世辞であっても、嬉しくないはずがない。
 だけど、それでもやはり、私は奏のことを思い出す。
 奏と瑠璃も、今どこかでパレードを見ているはず。
 私……やっぱり、奏のことが……。
 私には、奏しかいなくて。
 鉄平君には本当に申し訳ないんだけど……近いうちに、お断りしなきゃ……。

 せっかくのパレードだったのに、すっかり上の空だった。
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