聖夜は恋の雪に埋もれて
「しかし、それにしても遅いな、渋宮と鉄平。あと5分ぐらいしかないぞ」
 腕時計を確認すると、奏の言う通り、まもなく5時だ。
「鉄平君は、4時半まで何か用事があるらしいし、少し遅くなる可能性はあるかも」
「え? 渋宮も同じこと言ってたぞ」
 ええ?
 二人揃って、4時半まで用事なんて……偶然?
「でも、5時までには来るって言ってたのにな……」
 腕時計を見つつ、不満そうに言う奏。
「まぁ、まだもう少し時間があるから……」
「あ、そういや……。麗、これで本当にいいのか? 鉄平のこと、好きなんだろ?」
「え?」
 突然、なんでこんな話に?
「二人っきりで過ごしたいだろうに、四人でって形になってもいいのか?」
「え? べ、別に、鉄平君とは、そんな関係じゃ……」
「でも、遊園地デートしてたでしょ」
「ええっ、あれはその……誘われて、断りきれなかっただけで!」
 動揺のあまり、立ち上がってしまう私。
 すぐ気づいて恥ずかしくなり、慌てて座りなおした。
 そして、鉄平君ごめんなさい、こんな言い方をして……。
「でも、それは奏も一緒じゃん。あのとき、奏だって、遊園地デートしてたでしょ。瑠璃のこと、好きなんじゃないの?」
「いや、好きは好きでも、『友達として』な。俺が好きなのは、むしろ……。んん、何でもな………。あ……」
 何かを言いかけたみたいだったけど、突然、黙った奏。
 その理由は、私にもはっきり分かった。
 誰かが、私たちのテーブルまで歩いてきたからだ。
 奏と私は、一斉にそちらを向いた。
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