聖夜は恋の雪に埋もれて
 駅前に到着した私たちの目に飛び込んできたのは、電飾で飾られた美しいクリスマスツリーだった。
 きらめく光が幻想的で、まるで夢の中にいるかのような気持ちにさせる。
「綺麗だね~」
 瑠璃が明るい声で言う。
 静かに「うん、ほんとだね」とつぶやく奏の横顔に、私は釘付けになってしまった。
 もちろん、ツリーは綺麗だし、ずっとずっと見ていたいんだけど、それより何より、奏が気になって……。
 見ていることがバレると、気まずくなりそうで大変だというのは重々分かっているはずなのに、奏の横顔から視線をそらすことが、なかなかできなかった。



 また、ツリー以外にも輝くオブジェが幾つも置かれていて、駅前広場全体に幻想的な光景が広がっていた。
 瑠璃はすごく嬉しそうな顔で、なぜか手をバタバタさせながら見ている。
 奏は黙って、静かに見入っているようだった。
 そして、そんな奏の横顔に見とれる私。

「綺麗だよなぁ」
 急に奏がこっちを見て言う。
 ばっちり、私と目が合ってしまった。
 ああ! 見ていたことがバレちゃう。
「う、うん、すごく幻想的だね」
 何とかごまかそうと、間髪をいれずに答える。
「だよな~。ずっと見てられるぞ、これ」
 奏はそう言って、再びオブジェに視線を戻した。
 どうやら、こっそり横顔に見とれていたことがバレずに済んだらしく、ホッと胸をなでおろす。

 それにしても、ほんとに綺麗で……この光景を、奏と一緒に見られてよかった。
 今回は瑠璃のお陰で、こうして奏と一緒に来ることができたけど、私一人では、こんなロマンチックな場所に誘う勇気はなかったと思う。
 夏の花火大会だって、なんだかんだでいつも他の友達も一緒に、大勢で行ってるし……。
 奏と二人で出かけるときって、行き先はある程度決まってて、ボウリングとカラオケが大半だ。
 ああ、こないだ遊園地へは行ったかな。

 あ、そういえば……。
 ちょうど今、その遊園地「モカショコランド」にて、夜だけ、この時期限定のパレードをやっているんだっけ。
 12月限定のパレードで、電飾によって彩られた車たちが、園内を一周するらしい。
 それが綺麗だと評判で、クラスの間でも頻繁に話題になっている。
 奏を誘ってみようかな。
 遊園地になら、誘いやすいから。

 そんなことを密かに考えつつ、私は、奏とイルミネーションを交互に見つめていた。
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