十二月の向日葵
そろそろお茶が覚めてきたな。
この時間帯になると美咲はその日の出来事を俺に報告してくれる。
「今日はね、あなたの唄を歌ったら、いい唄ねって褒めてくれたの。
だからあたしね、嬉しくなっちゃってつい泣いちゃった。
そしたらね、頑張ってねってお金も入れてくれたんだよ!
その帰り道にはね、見て、百円拾ったの、落としたの誰だろうね、
あたし今日ついてるのかも!」
嬉しそうに笑う君を俺は本当に好きなんだなって、その度に自覚するんだよ。
つぎの日
おれは出掛けることにした。
楽器屋に入ると、
《そこの君!今こそ歯ギター!!》
なんてわけのわかんないキャッチコピーのポスターがお招きしてくれた。
(若い頃は歯ギターに憧れてたなんて誰にも言えない秘密だ)
やっぱり、gibsonのレスポールの重さだったり、fenderのストラトのあのなまめかしいボディーだったり、アコギはあの独特の木の香りがたまらない。
好きだよなー。
たぶん、俺って人生の中で大事なものって
美咲と、ギターかな。
たぶんこいつらがいればやっていけるわ
そのとき横にかかってある、ライブのチラシが目に入った。
『君への気持ち オーバードライブ ⚡⚡ 』
どうなってるんだこの店