ファミリー
(まさかこれが例の……)

それが現実のものでないとすぐに認識でき
たのは、沖田医師の話を聞いたのが、
つい二日前のことだったからだろう。

『そうそう、高森先生には一つ大事な
ことを教えておかないと』

病院の近くの居酒屋だった。

週末の夜だったせいか、その話が出た頃
には、みんなかなり酒が入っていた。

高森はもともと飲めない体質だったが、
ウーロン茶を片手に酔った同僚の相手
を辛抱強く続けるしかなかった。

なにしろ彼のためにわざわざ催された
歓迎会だったのだから。

真っ赤な顔で得意げに話し始めたのは、
外科の沖田だった
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