ファミリー
『あのね、先生。
一月の今じゃ、てんで時期外れの話だし、
ばかばかしいと思うだろうけど……
実は出るんですよ、うちの病院』

幽霊がね、それもちっちゃな男の子の
幽霊、と酒臭い息を吐きながら説明する
沖田の声は、なぜか楽しそうだった。

『ね、ちょっとすごいでしょ?』

すごいと言われても。

しかたなく笑顔を向けていたものの、
高森はほとんど話を聞いていなかった。

そろそろ話題も尽きていたから、
その話も新参者に対するご愛嬌の一つ
だろうと思ったのだ。

生と死が交錯する病院に怪談話は
つきものだ。

前の勤め先にもその類いの噂は
いくつかあった。
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