ファミリー
今は落ち着いているが、いつ急患が
運び込まれてくるともかぎらない。

入院患者の急変もあり得る。

そして朝になれば通常のハードな勤務が
待っているのだ。

生まれて初めて幽霊らしきものを
目にしたのだから、確かに少しは驚いた。

けれどそれにかかわり合っている暇など
ない。

しかし――

(ついてくる)

高森はそう感じた。

いつもと何が違うわけではない。

あやしげな音も不気味な声も聞こえない。

それでいて背後の感覚はどこかおかし
かった。

一歩進むごとに、自分以外の何か
もゆらゆらと移動しているような気がする。

(勝手にしろ)
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