狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
目を疑う光景
「アラン先生どこにいくの?」
立ち上がり、扉に向かって歩き出したアランに生徒たちが群がった。
「…アオイさんを探しに。ついでに職員室へ向かい、替わりの教員を連れて来ようかと…ね」
「え?アオイいないの?気が付かなかった…先生よく見てるねー」
(…大事な生徒を把握できずに教師が務まるものか)
「……」
内心反論したアランだが、余計な議論で時間を割(さ)くわけにはいかない。
身を翻した彼は脇目も振らず扉へと向かって歩みを進めると…
ガラリと扉が流れ、
「皆さん、遅れてしまい大変申し訳ありませんでした。これより茶道の授業を始めたいと思います」
長身のアランと同等、そしてその美貌さえ引けを取らぬ麗しい青年が流れるような動作で室内へと足を踏み入れてきた。
そして…彼の腕に抱き上げられ、小さく身を縮こめている少女の姿がある。
…恐る恐るこちらの様子を伺っていたのは…
「ア、アラン先生…」
アランの視線がこちらに注がれると、気まずそうにセンスイの袖へと顔を隠してしまったアオイ。
(どうしよう…こんな事したら余計あやしまれるだけなのに…)
恥ずかしさと誤解を解かなくてはならないという焦りが激しく入り混じる。しかし今、その手立てがないアオイは…ぎゅっとセンスイの袖を掴み、ただただアランの視線を逃れるためこうする他なかったのだった―――