狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
2 キュリオとエデン、時々アオイ
エデンの用件はこうだ。
満月の夜の悠久にしか咲かない…傷にとても良いとされる草花をいくつか譲ってほしいというものだった。
「もちろんだよ。あの花なら湖の畔(ほとり)に咲いているからね。次の満月の夜に持っていくといい」
悠久の国には<慈悲の王>キュリオや治癒の力を持つ魔導師たちがいる。つまりは怪我や病気を治す薬の心配はいらないのだ。
「もし、そんなに症状がひどいのであれば…ここに連れてきても構わないが…」
心配するキュリオにエデンは小さく首を振って答える。
「いや、鍛錬での怪我だからな。大したことはないんだ。」
すると安心したように<慈悲の王>は"そうだったのか"と表情を緩めた。
「礼を言わなくてはな…キュリオ殿。ありがたく頂戴する」
そんなエデンの言葉を聞いたキュリオは…
「…礼か…。なら…ひとつ私の頼みを聞いてもらえるかい?」
驚いた様子のエデンだが、
「もちろんだ。俺に出来る事なら何でも言ってほしい」
と穏やかな表情を浮かべている。
「ありがとう。君なら安心だ」
とキュリオも心底ほっとしたように明るい笑顔を見せた―――