狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
蜘蛛の巣に囚われた蝶
キュリオは左手でアオイの体を支えたまま、右手で優しく零れ落ちる涙をすくいあげた。
『…こっちを向いてアオイ』
伏し目がちに視線を合わせようとしない彼女に銀髪の王は囁くように呼びかける。
しかし…
『……』
(時々自分がわからなくなる…私の事なのに…)
アオイの耳には届いていない様子だった。
無言のまま一点を見つめ、すでに別の事を考えているのか小さな眉間に皺が寄っている。
『…誰の事を考えているんだい?』
『…え…?』
とたんに語尾を強く言葉を発したキュリオの声が耳に届いた。優しく涙を拭っていた右手が、アオイの顎をとらえ…無理やり上向きにする。
『…っ…』
そして驚いたように目を見開くアオイ。
『誰の事…って…?』
どうやらキュリオはアオイの心の中にやはりアレスやカイがいるのだと勘違いしているようだ。
『きゃっ…』
アオイの視界がぐるりと回転し…いつのまにか背中に感じるベッドの感触とキュリオの香り。
そして彼女の視線の先にあるのは天蓋ベッドの天井だった。
『お父様…?』
そしてその視界を遮ったのは無表情のキュリオの顔。
彼の艶やかな銀の髪が、まるでその身を縛り付ける蜘蛛の糸かのようにアオイの首や胸元に垂れ下がっている。
(私、お父様に押し倒されている…?)
ようやく自分の身に起こった出来事が理解できたアオイ。
呑気にそんな事を考えていると…
『…カイと眠るときはどんな風にベッドに入っていたんだ…?』
『ち、違うの…っ!別にカイの事を考えていたわけじゃなくて…』
『…腕枕をしてもらっていた?』
アオイの背にまわされていたキュリオの左腕は差し抜かれ、そのまま細い首の下を割って入ってくる。
『…ひゃっ』
ゾクリとする冷たい彼の指先に思わず声を上げてしまったアオイは、恥ずかしさにハッと口元を押さえて声を押し殺した。
『……』
しかし…それは自分の腕に違和感を感じたアオイが悲鳴をあげたようにキュリオの瞳にはうつっていた。そして彼女のそんな反応が気に食わないのか…
『やはり納得出来ないな…アオイ、背中を見せてごらん』
明らかな不機嫌さを含んだキュリオの顔が近づき、アオイへと覆いかぶさりながら耳元で囁いた。
『ど、どうして背中なんて…っ…』
あたふたとキュリオの体の下でもがくアオイ。
『お前の背に邪魔な翼がないか…私が確かめてあげよう』
スッとキュリオの右手が伸びてきて…
アオイの服のボタンをひとつずつはずし始める。
『ちょっと待ってっ!お父様…っそれはっ…』
今にも見えてしまいそうな成長途中であるアオイの胸のふくらみ。
必死になって両腕で押さえてみるが…
『隠すなんてますますあやしいね…』
完全に疑いの眼差しを向けるキュリオの手が小さな肩を撫でた。
そしてわずかな抵抗もかなわず、肩から滑り落ちていくアオイの衣服。
ヒヤリと外気に触れた白い肩。
常春で知られる悠久だが、日が沈んだ夜に肌をさらすのはやはり感心しない。
『…っ』
寒さに身震いしたアオイを眺めながらキュリオが呟く。
『早く終わらせたいのなら…体の力を抜きなさい』
耳元でさらに囁かれ、寒さとは違う震えがアオイの全身を駆け巡っていった―――
『…こっちを向いてアオイ』
伏し目がちに視線を合わせようとしない彼女に銀髪の王は囁くように呼びかける。
しかし…
『……』
(時々自分がわからなくなる…私の事なのに…)
アオイの耳には届いていない様子だった。
無言のまま一点を見つめ、すでに別の事を考えているのか小さな眉間に皺が寄っている。
『…誰の事を考えているんだい?』
『…え…?』
とたんに語尾を強く言葉を発したキュリオの声が耳に届いた。優しく涙を拭っていた右手が、アオイの顎をとらえ…無理やり上向きにする。
『…っ…』
そして驚いたように目を見開くアオイ。
『誰の事…って…?』
どうやらキュリオはアオイの心の中にやはりアレスやカイがいるのだと勘違いしているようだ。
『きゃっ…』
アオイの視界がぐるりと回転し…いつのまにか背中に感じるベッドの感触とキュリオの香り。
そして彼女の視線の先にあるのは天蓋ベッドの天井だった。
『お父様…?』
そしてその視界を遮ったのは無表情のキュリオの顔。
彼の艶やかな銀の髪が、まるでその身を縛り付ける蜘蛛の糸かのようにアオイの首や胸元に垂れ下がっている。
(私、お父様に押し倒されている…?)
ようやく自分の身に起こった出来事が理解できたアオイ。
呑気にそんな事を考えていると…
『…カイと眠るときはどんな風にベッドに入っていたんだ…?』
『ち、違うの…っ!別にカイの事を考えていたわけじゃなくて…』
『…腕枕をしてもらっていた?』
アオイの背にまわされていたキュリオの左腕は差し抜かれ、そのまま細い首の下を割って入ってくる。
『…ひゃっ』
ゾクリとする冷たい彼の指先に思わず声を上げてしまったアオイは、恥ずかしさにハッと口元を押さえて声を押し殺した。
『……』
しかし…それは自分の腕に違和感を感じたアオイが悲鳴をあげたようにキュリオの瞳にはうつっていた。そして彼女のそんな反応が気に食わないのか…
『やはり納得出来ないな…アオイ、背中を見せてごらん』
明らかな不機嫌さを含んだキュリオの顔が近づき、アオイへと覆いかぶさりながら耳元で囁いた。
『ど、どうして背中なんて…っ…』
あたふたとキュリオの体の下でもがくアオイ。
『お前の背に邪魔な翼がないか…私が確かめてあげよう』
スッとキュリオの右手が伸びてきて…
アオイの服のボタンをひとつずつはずし始める。
『ちょっと待ってっ!お父様…っそれはっ…』
今にも見えてしまいそうな成長途中であるアオイの胸のふくらみ。
必死になって両腕で押さえてみるが…
『隠すなんてますますあやしいね…』
完全に疑いの眼差しを向けるキュリオの手が小さな肩を撫でた。
そしてわずかな抵抗もかなわず、肩から滑り落ちていくアオイの衣服。
ヒヤリと外気に触れた白い肩。
常春で知られる悠久だが、日が沈んだ夜に肌をさらすのはやはり感心しない。
『…っ』
寒さに身震いしたアオイを眺めながらキュリオが呟く。
『早く終わらせたいのなら…体の力を抜きなさい』
耳元でさらに囁かれ、寒さとは違う震えがアオイの全身を駆け巡っていった―――