狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
挑発的な微笑み
それからは特に何事も起こらず無事に三時限目が終了し、教室へと戻って行った生徒たち。
彼らを笑顔で見送り、後片付けをしようと一人茶室に残ったセンスイ。
手早く器を洗い、釜の水気をふき取り、茶器のひとつひとつを丁寧に片付けていく。
彼のそれらすべての行動はとても繊細で品があり…どこかの貴族を思わせる優雅さを兼ね備えていた。
「片付けもこのくらいでしょうか…」
誰もいない和の空間でひとり呟くと…
ふっと楽しそうに引き上げられたセンスイの口角。
彼が目を細めた部屋の隅には、あの少女が座っていた畳椅子が居住まいを正すように置かれている。
「今週末の授業…アオイさんにこの椅子はもう必要ないでしょうね」
彼女の傷はかなりひどい状態にあった。だが、それ以上に手当の腕に自信があるセンスイはほぼ確信していた。
「完治した傷が"お父様"や"アレス"に見つかるのと、彼女が私の元へ包帯を取替えにやって来るのと…」
「一体どちらが早いか…明日が楽しみですね」
挑発的な微笑みを浮かべたセンスイは、真っ白い指先で畳椅子をひと撫ですると…大事そうにそれを抱え部屋の奥へと消えて行った―――