狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
見破られた正体Ⅰ
「そういえばアオイ怪我大丈夫?…ってかさ!センスイ先生と二人っきりだったんでしょっ!?」
ふと思い出したかのようにミキが興奮し、その身を乗り出してアオイへと近づいてきた。
「あ…」
センスイの名を聞いたアオイの胸はヒヤリと温度を下げていく。そしてチラリとアランの顔を覗いてみるが…
「アオイさんのお弁当、開けさせてもらいますね」
「はい…」
極めて平静を装ったアランが丁寧に布の結び目をほどき、重箱を並べていく。
「センスイ先生はアオイに気があると思うんだよねー…アオイはどうなの?」
気を落ち着けさせるためにミルクを口にしたアオイだが、唐突な彼女の発言にむせ返ってしまう。
「…ゲホゲホッ!!」
「ちょっと大丈夫?!」
背中を擦(さす)るミキに"大丈夫"と手を上げると、
「セ、…センスイ先生はとても素敵な方…だよね。でも心配しなくても私なんか見向きもされないって…」
と、言いかけたアオイの背後から人の気配が近づいて…
「アオイさんにそう言っていただけるなんて…これほど嬉しい事はありません」
「…センスイ先生…っ…」
「…え゙っ!?うっそ…!!超絶美形が二人もっっっ!!!」
「……」
嬉しい反面、複雑な思いを胸に抱えたアオイと…
人生の運、すべてを使い果たした夢心地の空間に卒倒しそうなミキ。
そして…明らかに不機嫌さを隠せずにいるアラン。
「おや…おいしそうなお弁当ですね。私もご一緒してよろしいですか?」
「は、はい…どうぞ」
「では、失礼いたします」
ニコリとこちらを見つめたままのセンスイは、体が密着してしまいそうなほどアオイへと近づき、そのまま腰を下ろした。
(どうしよう…すごく近い…)
センスイの爽やかな大人の香り。自分の意志と反して高鳴る胸の鼓動にアオイは動揺を隠せないでいる。
「アオイさんは本当に奥ゆかしい方だ…。
しかし、ご自分を卑下なさる必要はありません…なぜなら貴方は…」
「え…?」
『この悠久の…姫君なのだから』
センスイの唇がわずかにアオイの耳を掠り、彼女にしか聞こえぬ声で囁いたのだった―――