狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
センスイの正体
(どうしよう…先生はアレスの事を知っているんだ…)
(…お父様…っ!)
甘く誘うように彼女へと耳打ちするセンスイと、きゅっと強く瞳を閉じたアオイに気が付いたアラン。
とたんにアランの表情が苦々しく歪められていく。
「いい加減…彼女に構うのは辞めていただきたい」
アランの静かな怒りを含んだその言葉を受けたセンスイは、冷やかな視線だけを彼に向け…
「…辞めて欲しければ…」
「私のこの淡い想いごと…また記憶を戻してみてはどうです?」
ハッと顔を上げたアオイ。
「…嘘…まさかセンスイ先生…」
あまりの衝撃に驚きを隠せずにいるアオイ。
それもそのはず…
(…王の力に対抗出来るのは王の力だけ…)
「…貴様…何者だ」
立ち上がり、アオイを抱き寄せたアラン。
警戒した彼のまわりには、いつの間にか…ビリビリと強めの風が吹いている。
そしてそれは、かまいたちのように彼が結っている髪紐を切り裂き、艶やかな銀髪が風を受けて美しく広がっていく―――
「…おや?私が術を受けていないのが、そんなに不思議な事でしたか?」
あくまで笑みを絶やさず言葉を続けるセンスイ。
彼の表情からは微塵の焦りも感じさせず、警戒するアランの前に座したまま風になびく美しい髪を片手で押さえている。
「センスイ先生は…王様、なの…?」
震えるアオイの言葉を心地良さげに聞いているセンスイは着物の裾を揺らしながらゆっくり立ち上がった。
「ふふっ…本当に可愛いですねアオイさん」
「え…」
(…私からかわれてる…?)
戸惑いを隠せないでいるアオイが不安のあまりアランの袖をすがるように掴む。
そして彼女を安心させるため、その手に手を重ねたアラン。
すると…
「…だとしたら…どうなさいます?」
低く唸るようなセンスイの声が、アオイの中で地鳴りのように響いた気がした―――