狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

現実と理想の狭間で…

アオイの部屋の大きさ以上もある湯殿の中心へ腰をおろし、ふぅ…と安堵のため息をもらした。


(今日は色々な事があったな…お父様はまだ帰っておられないみたいだし…)


「そう言えば…シュウ…あれからほとんど会話してない…」


―――昼休憩から戻ったアオイとアランに気を使ってか、ミキはいつもと変わらず接してくれた。しかし…


『シュウごめんね、差し入れもしないで…』


五時限目始業間近に教室へと戻ったシュウ。真っ先に謝罪の言葉を口にしたアオイだったが…


『…ん?あぁ、…べつに…』


そう言ったきり、なぜか余所余所しい態度のまま六時限目まで終了してしまった。


(明日からどうやって過ごそう…)


そして最後に気になるのは…やはりセンスイの事だ。


(…朝早く保健室に行くのは失礼かな?なんとかお父様に気づかれないようにしないと…)


キュリオの言動からみて、センスイを嫌っているのは明らかだった。


「…皆が仲良く出来る方法ってないのかな…」


ポツリと呟かれたアオイの言葉が湯殿に響くが…そんなものに返事が返ってくるわけがない。この世界の五大国を見ても、それが永遠の課題であることは明白であり…何かを善と決めつければ、必ず悪がある。


「…誰も悪くないのに…」


悲しみの色を滲ませたアオイの視線が両膝に向けられると、"悪"としてキュリオの中に根づいてしまったであろうセンスイの優しい笑顔が浮かんだ―――


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