狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
激突!センスイVSアレス
「姫様を狙う曲者(くせもの)めっ!!」
扉の前に立っていた大柄の男のふたりがギラリと光る大剣を引き抜きセンスイへと狙いを定めた。
家臣たちは女官や侍女らを下がらせ、アオイの周囲を固める。
すると、彼らの行動がわかりきっていたセンスイは口元に薄笑いを浮かべ、吐き捨てるように呟いた。
「丸腰の相手に刃を向けるなんて…貴方がたの王といい、悠久は随分野蛮な輩が多いようですね」
「…野蛮なのは貴方のほうだ。センスイ殿。突然押し入って姫様を攫うと宣言した者を我々が快く受け入れるとお思いか?」
言葉に並みならぬ怒りを含んだ魔導師の一人が奥の部屋から姿を現し、アオイの前に立ちふさがった。
「…アレス…」
彼の名を不安そうに口にしたアオイ。
「…貴方が天才魔導師・アレス殿ですか。知っているのは名ばかりでしたが、まさかこうしてお会いできるとは…」
他意なく、にこりと笑みを浮かべたセンスイ。
またもその美しい彼の微笑みにつられ、ほっと肩を撫で下ろそうとしたアオイだが…
「さっそく…お手並み拝見と行きましょうか」
瞬時に声色と表情を鋭くしたセンスイがアレスへと睨みを利かせたのだった―――
「ここは通さんぞっ!!!」
大剣を振りかざした男たちがセンスイへと切っ先を向け、その大柄な体に似つかわしくないスピードで突進していく。露わになった強靭な腕が繰り出す強烈な一撃は風圧だけで常人をも吹き飛ばすほどの威力がある。
「ハァァアアッッ!!」
風を切り裂く刃の音が鈍く響き渡り、空気を伝ったその振動がアレスやアオイの服の裾を大きく揺らした。
「…遅い」
ボソリと呟いたセンスイは左足を大きく踏み込むと、あっというまに男の懐へとその身をすべり込ませた。
「なにっ!?」
しなやかなセンスイの体にそのようなスピードを繰り出すほどの筋肉があるとは誰もが思っておらず、驚きの声が上がる。
「懐がガラ空きです」
さらに視線を鋭く光らせたセンスイは右拳で男の腹に一発食らわせると、そのまま手刀で男の手を払った。
「ぐぁっっ!!」
「きゃっ」
骨が砕けるような嫌な音が響き、怯えたアオイは咄嗟に両手で耳をふさいでしまった。
センスイは表情を変えぬまま男の手から零れ落ちた剣が地に落ちる寸前、己のつま先で大剣の柄を軽く弾く。
すると剣はそのまま操られたかのように弧を描き…センスイの手中へとおさまっていった。まるで演武を見ているかのような美しい彼の身のこなし。
二人目の男がセンスイへと襲いかかるが、あっさり交わされ、彼の強烈な蹴りを食らい後方に吹き飛んだ。
「怖がらせてしまって申し訳ありませんアオイさん。すぐお迎えに参りますから…もう少々お待ちください」
呼吸を乱すどころか、かなりの重量であるはずの大剣を片手で軽々と持ち上げたセンスイは柔らかくアオイに微笑んでいる。
すると…
「その場から容易く動けると思わない事です」
戒めの術式が完成したアレス。彼の体から淡い光が発せられ、その輝きとセンスイの足元に浮かび上がった陣が同じものであることがわかった。そしてあっという間に光の鎖が這い出てくると、センスイの両足に絡まり、その身をしならせてきつく縛り上げていく。
「…なるほど」
足元を一瞥したセンスイだが、至って冷静さを保ったままだった。
「カイッ!」
「おうっっ!!」
アレスの呼びかけにどこからともなく姿を現した剣士のカイ。
二人の声にハッとしたアオイは飛び出してきたカイを追いかけるようにアレスの横を通り過ぎた。
「待ってカイッ!!その人は私の学園の先生なの!!」
「…えっ?!」
せめて峰打ち…と剣を構えたカイだったが、アオイの一言に思わず立ち止まってしまった。
「何してるカイッ!!急げっっ!!」
声を荒げ、立ち止まった剣士を急かすアレス。
「…カイ?その名は知りませんね」
呑気に顎に手を添え、考える素振りを見せるセンスイだったが…
「あぁ…勘違いなさらないでください。この程度の術など私には全くの意味をなさない」
再び笑みを浮かべたセンスイはアレスを嘲笑うかのように前髪をかき上げている。
「…っ!?」
彼の言葉がはったりなのか、真実なのか…間もなくその瞬間を目撃するアレス。
そして…センスイの右手が動き、逆手に持ち替えられた大剣。やがて彼の力を受けた剣は湖面を揺らす波紋のようにゆっくり、しかし確実にその刃を別の輝きで埋め尽くそうとしていたのだった―――
扉の前に立っていた大柄の男のふたりがギラリと光る大剣を引き抜きセンスイへと狙いを定めた。
家臣たちは女官や侍女らを下がらせ、アオイの周囲を固める。
すると、彼らの行動がわかりきっていたセンスイは口元に薄笑いを浮かべ、吐き捨てるように呟いた。
「丸腰の相手に刃を向けるなんて…貴方がたの王といい、悠久は随分野蛮な輩が多いようですね」
「…野蛮なのは貴方のほうだ。センスイ殿。突然押し入って姫様を攫うと宣言した者を我々が快く受け入れるとお思いか?」
言葉に並みならぬ怒りを含んだ魔導師の一人が奥の部屋から姿を現し、アオイの前に立ちふさがった。
「…アレス…」
彼の名を不安そうに口にしたアオイ。
「…貴方が天才魔導師・アレス殿ですか。知っているのは名ばかりでしたが、まさかこうしてお会いできるとは…」
他意なく、にこりと笑みを浮かべたセンスイ。
またもその美しい彼の微笑みにつられ、ほっと肩を撫で下ろそうとしたアオイだが…
「さっそく…お手並み拝見と行きましょうか」
瞬時に声色と表情を鋭くしたセンスイがアレスへと睨みを利かせたのだった―――
「ここは通さんぞっ!!!」
大剣を振りかざした男たちがセンスイへと切っ先を向け、その大柄な体に似つかわしくないスピードで突進していく。露わになった強靭な腕が繰り出す強烈な一撃は風圧だけで常人をも吹き飛ばすほどの威力がある。
「ハァァアアッッ!!」
風を切り裂く刃の音が鈍く響き渡り、空気を伝ったその振動がアレスやアオイの服の裾を大きく揺らした。
「…遅い」
ボソリと呟いたセンスイは左足を大きく踏み込むと、あっというまに男の懐へとその身をすべり込ませた。
「なにっ!?」
しなやかなセンスイの体にそのようなスピードを繰り出すほどの筋肉があるとは誰もが思っておらず、驚きの声が上がる。
「懐がガラ空きです」
さらに視線を鋭く光らせたセンスイは右拳で男の腹に一発食らわせると、そのまま手刀で男の手を払った。
「ぐぁっっ!!」
「きゃっ」
骨が砕けるような嫌な音が響き、怯えたアオイは咄嗟に両手で耳をふさいでしまった。
センスイは表情を変えぬまま男の手から零れ落ちた剣が地に落ちる寸前、己のつま先で大剣の柄を軽く弾く。
すると剣はそのまま操られたかのように弧を描き…センスイの手中へとおさまっていった。まるで演武を見ているかのような美しい彼の身のこなし。
二人目の男がセンスイへと襲いかかるが、あっさり交わされ、彼の強烈な蹴りを食らい後方に吹き飛んだ。
「怖がらせてしまって申し訳ありませんアオイさん。すぐお迎えに参りますから…もう少々お待ちください」
呼吸を乱すどころか、かなりの重量であるはずの大剣を片手で軽々と持ち上げたセンスイは柔らかくアオイに微笑んでいる。
すると…
「その場から容易く動けると思わない事です」
戒めの術式が完成したアレス。彼の体から淡い光が発せられ、その輝きとセンスイの足元に浮かび上がった陣が同じものであることがわかった。そしてあっという間に光の鎖が這い出てくると、センスイの両足に絡まり、その身をしならせてきつく縛り上げていく。
「…なるほど」
足元を一瞥したセンスイだが、至って冷静さを保ったままだった。
「カイッ!」
「おうっっ!!」
アレスの呼びかけにどこからともなく姿を現した剣士のカイ。
二人の声にハッとしたアオイは飛び出してきたカイを追いかけるようにアレスの横を通り過ぎた。
「待ってカイッ!!その人は私の学園の先生なの!!」
「…えっ?!」
せめて峰打ち…と剣を構えたカイだったが、アオイの一言に思わず立ち止まってしまった。
「何してるカイッ!!急げっっ!!」
声を荒げ、立ち止まった剣士を急かすアレス。
「…カイ?その名は知りませんね」
呑気に顎に手を添え、考える素振りを見せるセンスイだったが…
「あぁ…勘違いなさらないでください。この程度の術など私には全くの意味をなさない」
再び笑みを浮かべたセンスイはアレスを嘲笑うかのように前髪をかき上げている。
「…っ!?」
彼の言葉がはったりなのか、真実なのか…間もなくその瞬間を目撃するアレス。
そして…センスイの右手が動き、逆手に持ち替えられた大剣。やがて彼の力を受けた剣は湖面を揺らす波紋のようにゆっくり、しかし確実にその刃を別の輝きで埋め尽くそうとしていたのだった―――