プリムラ・オブコニカ
事の発端は酷かった。
「ねぇ、エリカ!」
高いテンションで私の肩を叩いたのは父、名古屋万(なごや よろず)。
かっこいい名前に負けず、ルックスも良く人当たりがいいので、妻子がいると分かっていながら近づいてくる人も多いモテモテ親父である。
しかしながら特性である超絶鈍感っぷりを発揮し、言い寄られている途中でお母さんとのノロケ話を始めるくらいなので、一回も浮気したことがない。
いや、しなくて当たり前なんだけども。
まあ、その話は置いといて。
「何?何時にも増してテンション高いけど、なんかいいことあったの?」
「あのさ、パパ転勤することになったんだ!エリカもついて来てくれるよね?」
「う、うん?」
「そっかあ、良かった!じゃあ明日引っ越しするからね!」
「うん!?」
お分かり頂けただろうか。
……こんな軽いノリで言われるとは思わなかったよ!!
しかも私「うん」とは言ったけど、肯定してないよ!!
しかし時は遅く、10分後には私は転校手続きの書類にサインをしていたのだった。