プリムラ・オブコニカ



二棟の多目的ホールの場所は丁寧に果たし状の裏に書いてあった。

果たし状さえなければ親切な人だと好感度アップしてたのに…

そんなことを考えていると、大きなドアが私を待ちかまえるように廊下の突き当たりにあるのが見えた。多目的ホールだ。


ドアに手をかけ、恐る恐る開く。


「こ、こんにちはー…?」


…返事がない。
すっぽかされたんだろうか、それならラッキーだけど。


「君が名古屋恵理香さん?」

「ぬっほおおお!」


びっくりした!突然後ろから話しかけられたらこの反応は当たり前だろう。
私は『きゃあっ』とか言えない系女子なのでそこは理解してほしい。


「あれ、びっくりさせちゃったかな…ゴメンね。で、君は名古屋恵理香さんなんだよね?」

「…はい」

後ろを向くと、これまた松江先生レベルの顔面クオリティの方が立っていたので、情けない声が出てしまった。

青みがかった濃い黒髪に光に照らされるとうっすらと緑が映し出される目。

松江先生のつり目のように主張が強くない優しそうな垂れ目に柔らかな笑顔。文句のつけようがないイケメンだ。

「そっかあ、もっと強そうな子かと思ったのに、こんな華奢な子だとは思わなかったよ。」

「はは、華奢なんてそんなことは…まあ、あるんですけど」
中身が土木作業員のおっさんなのでちょっと見栄を張らせてくれてもいいだろう。

「ふふ、何を勘違いしてるか知らないけど、加護は強いくせに本人は弱そうで釣り合ってないなって意味だからね?」

「は、はい?」


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