【短】壁ドン シミュレーション
「胸キュンってのがね、イマイチよくわからない」
「俺に聞くなよ」
「…だって、面白そうだと思って」
ただ、彼の反応を見たかっただけ。
でも案の定な反応。
想定内の返事だった。
すると彼が突然、見ていたテレビを消した。
CMに入ったわけでもなく…、まだ番組の途中で。
しかもさっきまであんなに笑っていたのに。
つまらないわけでもなく?
どうして?
「――どけ。俺にも座らせろ」
「あ、ああ、ごめん」
…まったく。もうちょっと言葉選んで欲しいわ。
いくら長くつるんでいるからって。
まぁいつものことだけどね。
足を引っ込めて座り直すと、彼が隣に座った。
これは、“壁ドン”の話をしたがってるのか?
壁ドンのノウハウを学ぶつもりなのだろうか。
いや、それ以外に考えられない。
彼が座ったところで、期待に沿うべく、壁ドン話を再開した。