【短】壁ドン シミュレーション
「この間ね、友達と壁ドン“ごっこ”をしてたの」
「何歳だよ、お前」
だって、何がいいのか知りたくて。
「綾(リョウ)と同じよ」
「で、どうだったわけ?」
一応聞いてくれるらしい。
「…残念ながら、よくわからなかった。イメージしやすいように相手にうちわ持たせて顔見えなくしたんだけど」
「…余計にわかんねーだろ」
彼はもう呆れ気味で、おもむろに立ち上がり、キッチンの方へ行ってしまった。
――ああ、折角反応が面白かったのに。
相変わらず口の悪い教師だ。
顔はまあいい方だけれど、これはさぞや生徒には不人気に違いない。
彼は水を片手に持ち、すぐに帰ってきた。
もうどこか違うところに行ってしまうだろうと思っていたのが、またソファーに腰掛けるので、びっくりする。