【短】壁ドン シミュレーション



温度が上昇する。


鼓動が高鳴る。



彼の瞳は真剣そのもので、揺らぐことなく。


私を真っ直ぐに見つめ、


貫いた。




「……あの、本当に、今さらね」



言葉が見つからなくて、顔を背けてそんなことを言う。



だって今更付き合うって、もうどこかの夫婦以上の時間をともに付き合ってきた。


今更わざわざ、付き合うだなんて言葉は、なんだか変。




「紗奈は?」



…でも。



彼は確信犯だった。私の瞳を今度は、面白げに見つめていて。


試されているようだった。




「……好き、だけど?」


「だけど?」



幼馴染に、こうも無理やり意識を持っていかれると、ドキドキせざるを得ない。



彼のこれまでの素っ気ない態度は、まさか、ツンデレの“ツン”というやつ?



…なんだか可愛く見えてきた。



< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop