涎が出るほど抱き締めて

「前から美味しそうだなーって思ってて、印つけてたの」

そうっと首筋を撫でられる。

そこには青いアザがある。

生まれつきある、蝶々みたいな形の小さなアザが――


「えっ!?まさか…これが?」


「んー」

「生まれつきありますよこれ!」

「だから、生まれた時から食べよーと…晴ちゃんが赤ちゃんの時にね?」

「あなた何歳ですかっ!」

意味わからない。

だって、赤ちゃん食べたいと思う?

それに食い物と見られてたなんて…憤慨した。


「わかんない」


「ば、化け物っ」


反射的にいった言葉。

無言ですぅっと離れた彼の顔を見た。



――怒ってる。



「あ…す、すみません…」

「そーだよ、俺は化け物だよ」

拗ねないで。


なんだかめんどくさいやつだ。



まあ、確かに…

化け物っていわれたら悲しくなるよね。


途端に申し訳なさでいっぱいになる。


「ごめんなさい…その、言葉のあやで」

「許さないよ?」


にっこりと、上から目線で笑われた。

…変なひとだ。
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