涎が出るほど抱き締めて


笑ってはいるが、怒ってもいる感じのかれ。


ああ…どうしよう。

頭を撫でてくれたのに。

コーヒーくれたのに。

自殺を止めて(?)くれたのに。


「…どうしたらいいですか?」


む、と私を見据え、暫し悩んでまた笑う彼。


「じゃあ、何があったか話してよ?唾つけたといえ、俺もさすがにおねーさんをずっと見てたわけじゃないし…ね?」

そうなの?

ずっと見てたわけじゃないの?


なんだかホッとしつつ、唾つけられてた事実に辟易。


…まあ、死んでから食べるんだからまだいいか。


「…わかった」


「わーいっ」


機嫌をよくした彼。

話すことにしてよかったと思った。



「――始まりはお母さん達が死んだことなの」



そう。


この悪夢の始まりは。
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