涎が出るほど抱き締めて
「なにしてんのおねーさん?」
ク、ククク…と笑い声が響く。
声の主は彼だ。間違いなく。
「あ、の…」
マジマジと見るが、襲ってくる気配はない。
なんとなく安心。ホッ…
じゃあこいつはなんのために来たんだ?
うら若き乙女の自殺を邪魔しよって。
「てか、これ…なに?」
「シミター」
「何が?」
染みた?
「…バカなのおねーさん?」
目を妖しく細めた。
ぞく、と背筋があわだつ。
「ひ、ひっ」
間抜けな声が歯の間を抜けたのは、私の人生が終わるはずの日だった。