涎が出るほど抱き締めて
◇◇◇


【ナゴーブ 会員ナンバー206 朽木夜臣】



そうかかれたカードを食い入るように見つめる。


ビビりまくる私に、まあ折角ですしお茶でもと自らパシりを申し出た彼は、そんなカードを置いていった。

『おねーさん、これでも見て待ってて』と。



くちき…やおみ?


綺麗な名前だけど、この真っ黒なカードが意味不明。

これ見て何がわかるってゆーんだ。


身分証明にもなりゃしない。

そもそもナゴーブって何?会社かなにか?



「…はあ…」



て、ゆーか。


「死ねなかった…」


死にたかった。

じゃないと、私は一生死んで生きていかなきゃならなくなる。

だったらその前に、肉体的に死にたかった。


なのに、なんでこんなイケメンなんかに助けられなきゃならないんだ。




恐ろしいほど何もない私の部屋

否、もう私のじゃない。


もう私がいていい家じゃないんだ。


破れてギリギリ下着が見えないブラウスを手で押さえ、もう一度カードを見る。



つくづくついてないな。
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