君の名を呼んで 2
ひとしきりの熱が冷めた後。
私は飲み物を持って来てくれた皇にお礼を言って受け取ると、ずっと気になっていた彼の事を聞いた。
「要は、大丈夫だった?」
皇は顔をしかめたけど、結局は頷いて私の疑問に答えてくれる。
「ああ、あいつの怪我も大した事無いし、検査も異常無いそうだ」
それにホッとして、おずおずと皇を見上げる。
「私、また何か迷惑をかけてませんか」
彼は面食らったように私を見下ろして。
首を横に振った。
「……いや、今回はむしろ、月島の方が責任を感じてたな。一緒に居たのに守れなかったって」
そんな。あんなの防ぎようが無い。
それにアイツの狙いは私だったんだから、要はただ巻き込まれただけなんだ。
そう言えば、皇は苦笑して私の頭を抱えた。
「お前のせいじゃない。強いて言うなら、知ってた俺だってもっと警戒すべきだった」
「皇は気をつけてくれてた」
今なら分かる。
私がカフェに居た時、相手が要だと分かってほっとしてたのも。
旅館からタクシーを使えって言ってたのも。
全部皇は、私に気づかせないように、私を守ろうとしてた。
「心配かけて、ごめんなさい」
小さくなった言葉に、皇はくしゃりと私の髪をかき回して視線を揺らした。
「お前が居ないと、俺は」
言い淀んだ言葉は、最後まで発せられる事無く。
彼自身も自分の危うさに戸惑っているのだと気づいた。
「……俺が、怖いか?」
私は首を横に振る。
確かに、戸惑いはした。でも。
「……愛してる」
信じてる。
それだけを伝えたくて、彼を見た。
皇は私を見つめ返して、そのまっすぐな視線に、射抜かれる。
「……俺を犯罪者にするなよ」
苦笑いで冗談に紛れさせた言葉に、あの瞬間がまた、脳裏に浮かんで。
泣きたくなるのを必死で隠した。
「……今でも充分セクハラという犯罪を犯してます」
「言いやがったな、コラ」
ごめんね、は違う。
ありがとう、も違う。
やっぱり、
「愛してる、皇」
抱き寄せられた身体はすんなりと皇の腕に収まった。
「月島には、落ち着いたら会えば良い」
落ち着かせるように、宥めるように、私にそう言って微笑む彼に。
私は静かに頷いた。
私は飲み物を持って来てくれた皇にお礼を言って受け取ると、ずっと気になっていた彼の事を聞いた。
「要は、大丈夫だった?」
皇は顔をしかめたけど、結局は頷いて私の疑問に答えてくれる。
「ああ、あいつの怪我も大した事無いし、検査も異常無いそうだ」
それにホッとして、おずおずと皇を見上げる。
「私、また何か迷惑をかけてませんか」
彼は面食らったように私を見下ろして。
首を横に振った。
「……いや、今回はむしろ、月島の方が責任を感じてたな。一緒に居たのに守れなかったって」
そんな。あんなの防ぎようが無い。
それにアイツの狙いは私だったんだから、要はただ巻き込まれただけなんだ。
そう言えば、皇は苦笑して私の頭を抱えた。
「お前のせいじゃない。強いて言うなら、知ってた俺だってもっと警戒すべきだった」
「皇は気をつけてくれてた」
今なら分かる。
私がカフェに居た時、相手が要だと分かってほっとしてたのも。
旅館からタクシーを使えって言ってたのも。
全部皇は、私に気づかせないように、私を守ろうとしてた。
「心配かけて、ごめんなさい」
小さくなった言葉に、皇はくしゃりと私の髪をかき回して視線を揺らした。
「お前が居ないと、俺は」
言い淀んだ言葉は、最後まで発せられる事無く。
彼自身も自分の危うさに戸惑っているのだと気づいた。
「……俺が、怖いか?」
私は首を横に振る。
確かに、戸惑いはした。でも。
「……愛してる」
信じてる。
それだけを伝えたくて、彼を見た。
皇は私を見つめ返して、そのまっすぐな視線に、射抜かれる。
「……俺を犯罪者にするなよ」
苦笑いで冗談に紛れさせた言葉に、あの瞬間がまた、脳裏に浮かんで。
泣きたくなるのを必死で隠した。
「……今でも充分セクハラという犯罪を犯してます」
「言いやがったな、コラ」
ごめんね、は違う。
ありがとう、も違う。
やっぱり、
「愛してる、皇」
抱き寄せられた身体はすんなりと皇の腕に収まった。
「月島には、落ち着いたら会えば良い」
落ち着かせるように、宥めるように、私にそう言って微笑む彼に。
私は静かに頷いた。