君の名を呼んで 2
 皆さん初めまして。

 ブランシュネージュ・プロダクション、入社4年目の星野諒平です。
 半年前から二ノ宮朔のマネージャーをしております。

 ただいま、会社の面々で呑みに来ています。
 メンバーは真野社長と城ノ内副社長、朔と梶原雪姫。



「へえ、雪姫と星野さんは同期なんだ」

 朔が俺たちを見比べながら言う。

「そうなのよねえ。私と、星野君と、堤さん~」

 もうかなりのペースで呑んでいるのか、ちょっと無防備に、にこりと笑いかけてくる梶原。
 コイツにしちゃ珍しいな。今日は旦那様から『酔ってもOK』令が出てるのかな。

 俺はうんうんと頷き返して。

「でも同期のなかでも梶原はぶっ飛んでるからなあ。城ノ内副社長にポンポン毒舌吐いてたかと思うと、いきなり結婚だし」


 影で彼女の結婚を聞いて、何人の男共がこっそり涙したか。
 まあ俺も実はその中の一人ではあったんだけど。

 ちょっと遠慮気味に副社長を見れば、彼はビールを傾けてにやりと笑う。

「ぶっ飛んでる、ね。確かにな」

 その姿がキマってる。
 ああ、この人ってばほんっと、男の俺から見ても格好良すぎだろ。


「同期で呑みに行ったりしないの?」

 朔が聞いて来たので、俺は答える。

「ああ、前はよく行ってたよな。あ、あれ知ってます?梶原の隠し芸」

「「「は??」」」

と、皆が俺を見た。


「隠し芸?」

 城ノ内副社長が怪訝な顔をする。
 あれ?この人も知らないのか。

「梶原が泥酔するとどうなるか、見たこと無いんですか?」

 俺は皆の顔を見回すけれど、皆知らないみたいだ。

「梶原ちゃん、このメンツで集まると運転手になってくれるから、いつも呑まないんだよね。打ち上げとかでもセーブしてるみたいだし」

 真野社長が苦笑して言った。
 ああ、梶原そゆとこ真面目だもんな。


「家ではどうなんですか?」

 朔が副社長に聞くと、彼は少し考え込んで。

「家でもほろ酔いってとこだな。大抵酔い始めると、俺が我慢できなくなって押し倒すから、泥酔させるほど呑ませる事なんて無い」

 ぎゃ!なんてこと言ってるんだこの人は!!

 いつもなら真っ先に真っ赤になって止めるはずの梶原が、何にも言わずにほえほえ笑ってる。

 あ、これかなり酔いが回ってるな。
 いけるかも。
< 116 / 140 >

この作品をシェア

pagetop