君の名を呼んで 2
***

撮影後、すずを送った私は会社へと戻ってきた。
直帰しても良いと言われていたけれど、細かい仕事を残してるのよね。
オフィスへ入ると、私に気づいた城ノ内副社長がズンズンと近づいてくる。

え?え?

思わず反射で逃げ場所を目で探すけど、背後はデスク。
だいたい彼が私を逃がすわけがない。


「雪姫、お前俺に黙ってることがあるだろう」


開口一番にそんなことを言われて、私はギクリと固まった。
隠し事なんて、一つしか思い当たらない。
しかもこのタイミングとなれば。

嘘、もうバレてるの!?

焦った私は城ノ内副社長の前で、両手をぶんぶんと振る。


「だから、なんでもないんですってば!は、初恋くらい、いいじゃない!」

「は?」


あ、あれ?

予想に反して、城ノ内副社長は怪訝な顔をした。

し、しまった!
どうやら要の話じゃないみたい。

私は一気に血の気が引くのを感じる。
その前で、彼がゆっくりと、口の端を吊り上げた。


「雪姫ィ?なんだか楽しそうな隠し事だなあ?」

城ノ内副社長の、わざとらしい笑みが怖すぎる。

「えっとぉ、私の勘違いだったみたいです~……」

ソロソロと後退する私の腕を、彼がガッチリ掴んだ。

「その隠し事、報告してもらおうか。副社長命令だ」

ぎゃあああ!


今にも会議室に連れ込まれそうになって、全力で逃げ出そうとした、その時。


「城ノ内さん!」


掛けられた可憐な声。
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