君の名を呼んで 2
番外編 #3 すずと朔の物語
 藤城すず
 18歳 BNP俳優部所属
 ドラマ、映画、CMと、その演技は広く認められつつある、新進気鋭の若手女優。

***

「私、今度二ノ宮さんの相手役なの」


 そう言ったのは、同期で仲の悪い女優、牧アカリだった。

「キスシーンもあるし、楽しみ」

 多分、二ノ宮先輩と仲が良い(と思われている)あたしに聞こえるように言われた言葉。
 聞こえないフリをして社内カフェを出る。

 雪姫ちゃんとの打ち合わせ。早く来すぎて、失敗したな。
 結婚したばかりの彼女の、幸せそうな笑顔。あたしはそれが大好きで、大好きで。
 きっと雪姫ちゃんに会えば、元気になれる。
 
 チクリと痛んだ胸を、ごまかした。


 二ノ宮朔、BNPの看板俳優。

 一週間前、彼にキスされた。

 けど、それだけで、あたしたちに確実な約束は何もなくて。
 つき合おうとも、好きだとも言われてない。
 二ノ宮先輩は雪姫ちゃんのことが好きだった。

 もう彼女のことは吹っ切れたの?
 ねえ、あたしにキスをしたのは、なぜ?

 教えてよ、二ノ宮先輩ーー。
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