君の名を呼んで 2
二ノ宮朔
23歳 BNP俳優部所属
その定評ある演技で映画、テレビ、舞台と数々の分野で活躍を見せ、若手俳優の中ではトップクラスの実力を持つ。
初主演映画では製作にも深く関わっている。
***
「はい、オッケーです」
カットがかかって、目の前の女の子から離れた。
「二ノ宮さん、素敵でした~」
「どうも。お疲れ様」
赤い顔ですり寄る彼女をかわす様に立ち上がると、ADに次のシーンの確認をしに行く。
「はい、じゃあこれで……。あ、二ノ宮さん、さっきBNPの藤城さん来てましたよ」
「え?」
突然の名前に、思わず顔を上げた。
藤城って、すず?
雪姫にこっそり聞いていた、彼女のスケジュールを記憶から引っ張り出す。
確か今日はドラマの番宣。そうか、あのドラマはこの局だった。
「撮影観て、マネージャーさんとさっき出ていかれましたけど」
ーー見られた。
キスシーンを?
一瞬セットを出ようとして、何を動揺しているんだ、と自分を抑える。
演技を観られただけだ。
今までだってこんなのは何度も演ってきたし、この先もあるだろう。すずだってプロの女優だ。
なんて、動揺した気持ちを誤魔化す。
ーー自分を棚にあげて。
すずにキスをしたのは、冗談でも、軽い気持ちでも無かった。
けれど、冷静だったかといえば、そうじゃない。
彼女の初めてのキスが、他の男に持っていかれるかと思ったら、演技とはいえ悔しくて。
動揺する顔が、はにかむ顔が可愛くて、無性に愛おしくて。
さりげなさを装うのが精一杯だった。
した瞬間、
「先輩ばっかり余裕で、ヤダ!」と、すずに逃げられたけど。
余裕なんか無いのに。
でも俺も、順番を間違えた。城ノ内さんの事ばかり責められないな。
だからせめて、彼女に誤解される前に、告白しようと決意していたんだ。
ーーけれど。
23歳 BNP俳優部所属
その定評ある演技で映画、テレビ、舞台と数々の分野で活躍を見せ、若手俳優の中ではトップクラスの実力を持つ。
初主演映画では製作にも深く関わっている。
***
「はい、オッケーです」
カットがかかって、目の前の女の子から離れた。
「二ノ宮さん、素敵でした~」
「どうも。お疲れ様」
赤い顔ですり寄る彼女をかわす様に立ち上がると、ADに次のシーンの確認をしに行く。
「はい、じゃあこれで……。あ、二ノ宮さん、さっきBNPの藤城さん来てましたよ」
「え?」
突然の名前に、思わず顔を上げた。
藤城って、すず?
雪姫にこっそり聞いていた、彼女のスケジュールを記憶から引っ張り出す。
確か今日はドラマの番宣。そうか、あのドラマはこの局だった。
「撮影観て、マネージャーさんとさっき出ていかれましたけど」
ーー見られた。
キスシーンを?
一瞬セットを出ようとして、何を動揺しているんだ、と自分を抑える。
演技を観られただけだ。
今までだってこんなのは何度も演ってきたし、この先もあるだろう。すずだってプロの女優だ。
なんて、動揺した気持ちを誤魔化す。
ーー自分を棚にあげて。
すずにキスをしたのは、冗談でも、軽い気持ちでも無かった。
けれど、冷静だったかといえば、そうじゃない。
彼女の初めてのキスが、他の男に持っていかれるかと思ったら、演技とはいえ悔しくて。
動揺する顔が、はにかむ顔が可愛くて、無性に愛おしくて。
さりげなさを装うのが精一杯だった。
した瞬間、
「先輩ばっかり余裕で、ヤダ!」と、すずに逃げられたけど。
余裕なんか無いのに。
でも俺も、順番を間違えた。城ノ内さんの事ばかり責められないな。
だからせめて、彼女に誤解される前に、告白しようと決意していたんだ。
ーーけれど。