君の名を呼んで 2
「俺は間違った事は言ってない。守る覚悟も無いなら、最初から中途半端に関わるべきじゃない!」

 いつになく、声を荒げた社長に。

「真野。それは誰の話だ?」

 静かに落とされた城ノ内副社長の声。
 は、と真野社長が息を呑んだ。

「ごめん、梶原ちゃん。つい……ムキになった」

 雪姫ちゃんもびっくりした様子で、いえ、と首を振る。

「でも、朔のことは……」

「彼自身が決めることだよ。君もマネージャーなら、彼女を守ることを第一に考えなさい」


 ああ、やっぱり。
 これはあたしの、話だ。


「雪姫。とりあえずお前は自分の仕事をしろ。この姫を送ってくんだろ?」

 城ノ内副社長があたしの隠れていた扉を大きく開く。
 あ、ばれてた。


「すず!」

 気まずそうな雪姫ちゃんと、真野社長に向かって

「今の、どういうこと?」

 あたしは詰め寄った。



 話を聞き終わって。

「そう。わかった」

 あたしは驚くほど、冷静だった。

「すず?」

 雪姫ちゃんの心配そうな顔に、大丈夫だよ、と頷く。


「真野社長の言うとおりだよ。二ノ宮先輩は“藤城すず”を守ってくれるけど、あたしと付き合う覚悟は無いってことでしょ」

 ただ淡々と言えば、さすがに真野社長は苦い顔をした。

「そんな」

 フォローしようとした雪姫ちゃんを遮って。

「でもね」

 あたしは皆を見回す。


「あたしは、そうじゃない」


 二ノ宮先輩。後悔させてあげる。
 藤城すずを甘く見たこと。
 開き直ったオンナノコが、恋するオンナが、どれだけ強いか。

 今すぐに、わからせてやるんだから。
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