君の名を呼んで 2
は、と目を開ければ、二ノ宮先輩の顔がすぐ真近にあって。
あたしはまるで彼に押し倒されたような体勢になっていた。

だけど彼の表情は苦しげで、甘い熱なんて感じられなくて。
あたしを全身で抑え込もうとしているのが分かる。

ーー拒もうと、しているのが。


負けまいと、あたしは彼を見上げる。


「あたしはっ、二ノ宮先輩のことがーーッ」


押し付けられた唇に、言葉は消えた。


口を塞がれて。
あたしは目を見開く。

それでもなお、言おうとするあたしに強く強く先輩の唇がそれを封じ込めようとする。
開いた口に押し込まれた熱があたしの口のなかで絡みついて、もう言葉どころか、息をすることさえできずに。

あたしは次第に虚ろになってただ彼の首にしがみついていた。


どうして。
どうして言わせてくれないの。
どうしてこんな、キスをするの?



「ーーごめん」



ぼんやりした意識の向こうで、二ノ宮先輩が切なそうに呟いたーー。
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