君の名を呼んで 2
二ノ宮先輩の真剣な顔をあたしも見つめ返す。

「俺が距離を置くのが、女優・藤城すずの為だと思った。だけど、昨日のお前を見てたらやっぱりーー駄目だ」


先輩は、ふ、と苦笑した。

『駄目』の真意がわからなくて、あたしは彼の言葉を待つ。

彼はあたしの頬に片手を触れさせて、優しく撫でた。
それは愛おしさが込められているように錯覚してしまうほどゆっくりあたしを伝って。


……錯覚、じゃないの?


「どうしても、俺から言いたかった。だから真野社長に宣言して来た」


あたしは彼の言葉に驚いて、頬にある、その手を掴んだ。
二ノ宮先輩の瞳には、あたしだけが映っている。



「ーー俺はすずの事が好きだ。
“藤城すず”も、“二ノ宮朔”も必ず守ってみせる。すずじゃなきゃ、駄目なんだ。
ーーそう言って来た」

「二ノ宮、センパ……」


嘘。
昨日のは、振られたんじゃなかったの?
あたしは、


「すず、好きだよ。俺と付き合って」


諦めなくて、良いの?
言っても、良いの?


「あたしも……あたしも、二ノ宮先輩が好き」


反射的に口にした言葉に、彼は微笑んだ。
あたしの瞳から零れた涙は二ノ宮先輩の手を濡らして。

優しいキスがそれを拭っていった。
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