君の名を呼んで 2
「あたし、怖かったのかなあ」

ソファにゴロリと横になる。

本当は、二ノ宮先輩の足を引っ張るんじゃないか、それで嫌われちゃうんじゃないかって。
先輩が、あたしより”俳優 二ノ宮朔”を選んだらどうしようって。そう、思ってた。


「ライバルは”二ノ宮朔”かあ」

「何バカな事、言ってるの?」

クスクス笑う声がなんだか妙に色気に満ちてる気がするのは、惚れた弱みってやつ?


そう、ここは二ノ宮先輩のマンション。
彼の部屋で、一緒にテレビを観てるってわけで。


「先輩の猫かぶり。嘘つき」

「猫じゃない。演技派って言えよな。でも、お前にもう嘘はつかないよ」


そんな風に優しく笑うから。
あまのじゃくなあたしは、ついその涼しい顔を崩したくて。

「仕事中にイキナリぶっ飛ぶし。あ、もしかしてヤキモチ?」

ニヤリと言えば、彼は顔をしかめた。


「忘れろ。格好悪いから。お前があいつと演技でもキスしたのかと思ったらムカついたんだよ」

「自分もしたくせに」

「だからこそ、格好悪いんだろ。仕事にヤキモチなんて」


苦々しく言う先輩が、なんだかちょっと可愛くて。
あたしは種明かしをする。


「してませんよ」


「え?」


驚いた顔の二ノ宮先輩に、いたずらっぽく言ってみる。
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