君の名を呼んで 2
「江坂さん、お願いします~」とスタッフの声がして彼が離れて行くと、要は私に小さな声で問う。

「なあ、BNPの副社長って……女性関係派手だって聞くけど、雪姫、大丈夫なのか?」


ああ、今までの悪行三昧がこんなところにまで広がってるとは。
私は苦笑いして要に言った。

「大丈夫だよ。ちゃんと私を大切にしてくれてる」

けれど私の言葉に納得ができなかったのか、彼は真剣な顔で私に言う。

「何かあったら言えよ。一人で隠れて泣いたりするなよ」


その言葉に、なんだか昔を思い出して。ふっと笑みがこぼれた。
かわってないなあ、かなちゃんは。

「うん、ありがとう」

すぐ後に要もスタッフに呼ばれて、しばらくすると本番が始まった。

「はい、スタート!」

要の演技は荒削りだけど、すごく画面映えしてカッコいい。
きっとまだまだ人気が出るだろうな。
ウチの俳優じゃないのが残念だけど。



「あ、梶原さんじゃないの」

彼を眺めていた私に声を掛けたのは。
皇の幼なじみ、女優の美倉舞華(みくらまいか)さん。

ディズニー映画の白雪姫みたいな真っ黒ボブに真っ赤な唇、相変わらず美人さんだわ。


「舞華さん!今日撮影だったんですね」

「あなたこの後暇?お茶しましょうよ」


そう。
舞華さんに嫌われていたはずの私だったけど。

今では結構仲が良かったりする。
(舞華さんは否定するけどね)
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