君の名を呼んで 2
「そうですね。すずも今日は調子いいし、早く終わりそう」

私の言葉に舞華さんは撮影中のすずを見て、その隣の要を見た。
訳知り顔でニヤリと私に微笑みかけてくる。

「あの彼、梶原さんの初恋の彼なんですって?浮気するなら皇は私がもらっちゃうわよ」

「し、しませんよ!!」

油断も隙も無いんだから!

けれど彼女の本題はそこでは無かったらしい。
思い出したように眉を寄せて、私を見る。


「それよりあの小娘よ。あなたんとこの新人アイドルの」


舞華さんの口から出た人物にドキッとする。
彼女がこんな言い方をするってことは、皇に関係することだ。
それで新人アイドルですぐに思いつくのは。

「ナナミちゃん……?」

「それよ。何なのあの子。私がテレビ局で皇と話してたら、これ見よがしに敵意を向けられたけど」

敵意?ナナミちゃんが?
どちらかといえばおとなしそうで、そんなイメージがない彼女。


「そんな子じゃ……」

「馬鹿ね、油断してると足下掬われるわよ……って。ちょっと梶原さん、あなたなんて顔してるの」


ちょっとびっくりしたような、舞華さんの声音に私は慌てて顔を上げる。

ど、どんな顔してたんだろう。

舞華さんはちょっと呆れたように、けど笑って私に言った。

「まったく、あなたってばたまに凄いのに、普段は情けないんだから」

ううう、すみません。

話に夢中になっていた私は、まさかそれを要に見られていたなんて気づかず。
舞華さんの分かりづらい優しさに慰められていた。
< 23 / 140 >

この作品をシェア

pagetop