君の名を呼んで 2


「要、遅くなってごめんね」

駅前のカフェで、要は私を待っていた。
根性で、自由にならない身体を引きずるように歩いた私、偉い。

要はそんな私を見て、「具合悪いの?」と聞く。

……旦那様にメチャクチャにされましたなんて言えるもんか!

「あはは~大丈夫、大丈夫!要こそ」

一人でコーヒーを飲む彼は、変装もしていない。

「俳優なのに、こんな人目のある場所平気?」


以前朔とのスクープ写真を撮られたことを思い出した私の心配に、要は笑って答える。

「俺はまだ全然知名度低いから。堂々としてるほうが気づかれないよ」

そんなもんかな。

「それなら余計、前途ある俳優さんとしては気をつけなきゃ。私みたいなただのマネージャーと噂になってもつまらないでしょ?」

冗談めかして言った言葉に、彼は首を振った。
ジッと私を見つめる。


「雪姫となら、嬉しいよ」


その目に、引き込まれそうに強い光が宿る。
ビックリして、私は両手を叩いた。


「おぉ、カッコイイ!演技、上手くなったのね~」

思わずドキッとしちゃった。
そう言って笑えば、要はちょっと複雑そうな顔をした。


「鈍感?天然?躾?」


へ?
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