君の名を呼んで 2
「雪姫」


気づかれた。

ちょっとだけだけど!
ちょっとでも嫉妬したのを、気づかれた!

だって、彼はそれはそれは嬉しそうに、面白そうに笑ったもの。


城ノ内副社長はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべて、それはもう愉しそうに私を手招きする。
腕に抱えた資料を真野社長に渡して。

「来い、打ち合わせの続きだ」

今その資料、終わったでしょうが!

真野社長がぱらぱらとめくって「本当にお前は仕事だけはできるね」と苦笑いした。
私はじりじりと彼から逃げる。
少女達はそんな私と彼の様子にぽかんとしているだけで、もちろんその行動の意味なんて知らず、当然、助けを求めるわけにも行かない。

「あれでもう充分、どこも非の打ち所がないと思います!!」

「ンだとコラ。お前が決めるな馬鹿」

行きたくない!
なんかすっごく行きたくないんですけど!

私達の妙な緊迫感を察した真野社長が、笑いをこらえた顔で私に囁いた。


「城ノ内、今日は残業無しだな」
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