君の名を呼んで 2
勢い良く立ち上がった私は、自分の足腰の状態を完全に忘れていて、
いきなりかかった負荷に、ガクリ、と膝が折れる。
「……っ!」
床にへたり込みそうになった瞬間、
「雪姫!」
要が私を抱き止めた。
「大丈夫か」
「う、うん……ありがとう」
助かった、けど。
この距離は、マズイ、よね。
皇のことばかりを責められない。
昔馴染みだからと、迂闊に一人で会いに来たのは間違いだったかもしれない。
この鈍感女、と罵る旦那様の声が聞こえるようだわ。
咄嗟に彼の胸に手をついて、離れようとした。
けれど要は強く私を引き寄せる。
「は、なして。要ーー」
戸惑いながら彼を見上げたら。
その視線が私の背後に向いていることにギクリとした。
まさか。
「雪姫」
その声は、間違えようもない。
私にとっては、誰よりも愛おしい人の。
「皇……」
何かを言う間も無く、皇は足早に私達へ近づく。
怒られる!と身構えた私をよそに、彼は乱暴に私を引き寄せて、その胸に抱きしめてーー。
それからやっと、弾かれたように要を見た。
「ああ、お前か……」
え?
その手から力が抜けて、安堵したような声音に、妙な胸騒ぎを感じる。
予想外すぎる反応に、要も同じように怪訝な顔をした。
「……どうか、したんですか?」
彼の問いかけに、皇はハッとして取り繕うように、いつもの笑みを浮かべた。
「いや。留守番を頼んだ筈の馬鹿猫がこんなトコに居たのに驚いただけだ」
馬鹿猫って!
化け猫みたいなフレーズで言われて私は口を尖らせる。
「うちのが、世話になったな」
短く言い捨てて、皇は私の背を押すように外へと促した。
「要、じゃあまたね」
皇の陰から挨拶する私に、彼は笑顔で手を振ってくれた。
いきなりかかった負荷に、ガクリ、と膝が折れる。
「……っ!」
床にへたり込みそうになった瞬間、
「雪姫!」
要が私を抱き止めた。
「大丈夫か」
「う、うん……ありがとう」
助かった、けど。
この距離は、マズイ、よね。
皇のことばかりを責められない。
昔馴染みだからと、迂闊に一人で会いに来たのは間違いだったかもしれない。
この鈍感女、と罵る旦那様の声が聞こえるようだわ。
咄嗟に彼の胸に手をついて、離れようとした。
けれど要は強く私を引き寄せる。
「は、なして。要ーー」
戸惑いながら彼を見上げたら。
その視線が私の背後に向いていることにギクリとした。
まさか。
「雪姫」
その声は、間違えようもない。
私にとっては、誰よりも愛おしい人の。
「皇……」
何かを言う間も無く、皇は足早に私達へ近づく。
怒られる!と身構えた私をよそに、彼は乱暴に私を引き寄せて、その胸に抱きしめてーー。
それからやっと、弾かれたように要を見た。
「ああ、お前か……」
え?
その手から力が抜けて、安堵したような声音に、妙な胸騒ぎを感じる。
予想外すぎる反応に、要も同じように怪訝な顔をした。
「……どうか、したんですか?」
彼の問いかけに、皇はハッとして取り繕うように、いつもの笑みを浮かべた。
「いや。留守番を頼んだ筈の馬鹿猫がこんなトコに居たのに驚いただけだ」
馬鹿猫って!
化け猫みたいなフレーズで言われて私は口を尖らせる。
「うちのが、世話になったな」
短く言い捨てて、皇は私の背を押すように外へと促した。
「要、じゃあまたね」
皇の陰から挨拶する私に、彼は笑顔で手を振ってくれた。