君の名を呼んで 2
めんどくせえ兄貴だな。

自分の兄、帝を思い出して、どこのうちも同じようなもんかとため息をついた。
そんな俺を心配そうに見上げていたナナミに頷いてみせる。


「兄貴のことは俺が何とかする。とりあえず今日は別のとこに泊まれ」

「城ノ内さんのうちに泊めてくれませんか」

ナナミは顔をあげて俺を見た。
その意味を感じ取って、けれど気づかないフリをして首を横に振る。


「ホテル取ってやる。なんならカスミとハツミを呼ぶか?」


雪姫を連れてくれば良かった。
あいつならこんな時、ナナミの気を紛らわせてくれるだろう。


「ごまかさないで下さい」

ナナミは食い下がる。

「城ノ内さん」

潤んだ瞳で、上目遣いで迫られて。
……けれど、それを冷静に見ている自分が居る。
雪姫に同じことをされたら、きっと理性なんてぶっ壊れるのにーーぶっ壊してくれそうだったのに。

さっきまでのあいつを思い出して、音を立てた心臓を押さえて。
目の前の女の顔をひどく冷めた思いで見つめる。


『今日に限って、反抗しやがって』

あの愚兄の言葉がふと浮かんだ。


「……」


まさか、な?
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