君の名を呼んで 2
一人じゃないよ、と伝えた時のナナミちゃんの顔が。
私を心配するすずの顔が。
優しく笑う朔の顔が。
ふと、浮かんだ。

冗談じゃない!

私はぶんぶんと首を振って、両手で自分の頬を叩いた。
パチン!と小気味いい音がして、目が覚める。

のまれちゃ駄目だ。
しっかりしろ、雪姫。

「私はBNPのマネージャーなの。城ノ内皇の奥さんなの。何度不安になったって、何度泣いたって、絶対どっちも辞めたりしない!」


私が好きになったのはあのままの皇なんだから。
私は皇を無理矢理変えたいんじゃない。
一緒に生きていきたいの。
皇が同じように私を想っていてくれる限り。


私の言葉に、要の瞳から冷たい光が消えた。


「ーーそうか」


私が見たのは、あのくしゃっとした笑顔。


「……よかった」

「かなちゃん……?」


もしかして、とかすかな希望が浮かんだ。
要は、本当は……。




“ガツンッーー!!”




その瞬間。

要のうめき声と共に、私の目の前が急に明るくなる。
彼が崩れ落ちたのだと気づく前に、その背後に棒を振り下ろした相手が見えた。


「ーーあ」


喉から悲鳴が漏れる前に、その人物はもう一度、手にした棒を振り上げた。



「……!」



鈍い痛みと、衝撃と、目の前に降りていく真っ暗闇。


「こ……う……」



声にならない声で、私は必死で、助けを呼んでいた。
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