君の名を呼んで 2
スタジアム横に着いて、車を停めてからスタッフの集まる場所へと歩く。

「おはようございます!」

大きな声で挨拶すると、助監督が声を掛けてくれた。

「藤城さん入りますー!」

もうロケバスは到着していたようで、そこに居た出演者の面々が振り返る。
そちらに挨拶をして、輪に入って行くすずを見送って一息ついたところで。


「おい、もしかしてあんた、白鷺雪姫?」


急に掛けられた高圧的な声と、もうとうの昔に呼ばれる事の無くなった名前に、ぴくりと反応しながら振り返れば。

あれ?

そこに立っていたのはおそらく出演者達の一人。
私より少し年上の男性で、端正ながらもきつめの意思の強そうな瞳をしている。
彼は私に近寄って来て、自分の顔を指差した。


「俺のこと、わかる?月島要(つきしまかなめ)」


つきしま、かなめ?

その名前を思い出す前に、その瞳の強さを思い出す。

ーー『ゆき、オマエ台詞ヘタ!オレが教えてやるよ!』

ついでに、よく言われたセリフも。


「……かなちゃん……?」

私の口から出た愛称に、彼は子供みたいにくしゃっと笑った。

「やっぱり、雪姫だ」


白鷺雪姫ーー父親の姓であり、私の昔の名前。

両親が離婚するまでは私はその名前を名乗っていて。
父が世界的なモデルになるまでは、私は子役をしていた。

月島要は、そんな頃の私の仕事仲間で。


「かなちゃん……」


私の初恋の人ーー。
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