君の名を呼んで 2
「……うわ」


何かの冗談?
ドッキリ?

私の脳が現実逃避をしようとする。


だってこんなの。
深夜テレビで観た、B級ホラー映画みたいな。
まさか、本当に?


無数の写真はおそらくDVDをキャプチャしたもので。
その中に混じって、最近の私ーーどう見ても盗撮のーー写真まであった。


……こ、こわ。


私に近づく男の顔が見える。
やっぱりどこからどう見ても、どちらかといえば善良そうな、普通の人なのに。
今はその“普通さ”が却って異様な気もする。


男が口を開いた。


「君が子役を辞めてから、寂しかったんだよ」

「人違いですよ」


無駄な抵抗を試みたけれど、男は私に微笑みかけて、ゆっくりと部屋を見回す。
その余裕さに、背筋が凍った。
だけど反面、ターゲットがナナミちゃん達じゃないことにひどく安心している自分が居る。

男はにっこりと私に言った。

「テレビ局で君を見かけて、すぐにわかったんだ。まさかマネージャーになってるなんてね。あのメルヘン魔女っ子ユキちゃんが「ぎゃあああああっ!!!」」

私の叫び声で、彼の言葉を遮る。


よりによって!!
よりによってそこを出すか!!
羞恥で死ねってこと!!?
いや、あの役自体は良いのよ、懐かしい美しい思い出よ。
だけど今の私をその目で見ないでよ!!
そして何故私はいっつも子供時代を知る人にすぐバレるの?
童顔?童顔てことなの!?


もはや涙目の私を、彼はますます嬉しそうに見る。
うええ、気持ち悪い。
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