君の名を呼んで 2
side 皇

『もっしもし、皇くぅん?あ・た・し』

浮かれまくったふざけた口調で掛かってきた電話。
反射的に切ろうとしたなら、それを察した相手が慌てて言葉を重ねてくる。


『ちょ、ちょっとまて皇ちゃん。愛しのお兄様からの電話を切ろうとしてないか、君』

「頭の足りない変態からの電話は、お繋ぎできません。番号をお確かめの上、専用の受付窓口へお掛け直し頂くようお願い致します」

『みっくん専用って、真野ちゃんのことかなあ?』


電話の向こうのふざけた相手ーー帝はそんなことを言ってみせる。


「悪いがうちの社長は多忙でね。アポを取っていただければ50年後くらいには対応させて頂くが」

『50年!?あ~あいいとも!みっくんと真野ちゃんの友情は不滅さ!』


アホか。
俺はため息をついて携帯を持ち替えた。
とっくに停めた車の運転席に座ったまま、帝のくだらない話を聞く。

けれどよくよく考えてみれば、実家を出てから兄とまともに話したことなんて今まで無かった。

こんなに(くだらなさ満載だが)帝と関わるようになったのはーー雪姫のおかげだろう。


帝だけじゃない。
こじれたまま死んだ双子の兄、皇紀。
うちの両親。

雪姫は色々なものを、俺の手に取り戻してくれた。
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