君の名を呼んで 2
痛みも感じないその手を、額に押し当てた。
……落ち着け。俺が冷静にならなくてどうする。
あの馬鹿女のことだ。悪運なら俺の分までくれてやってる。
俺は息を吸って、自分を抑えた。
BNPの社用携帯は、社員や所属タレントがいつどこに居るか把握できるように、GPS位置検索が出来るようになっている。真野に連絡してセキュリティ会社に連絡を取ってもらったが、回答は期待に応えたものでは無かった。
『梶原ちゃんの携帯の電源が切られてて、位置はわからないそうだ。一番最後に特定したのは40分前で、場所はーー』
それに聞き覚えがあるような気がした。
最近、雪姫が仕事で行ったスタジオのすぐ近くだ。テレビ局にも近い。と考えたところで、思い出した。
ーー以前に雪姫に近づこうとした、不審者のことを。
「真野、警察に例の不審者がどこの誰か確認しろ」
あの男だ。
半ば確信を持って言った俺に、けれど警察からの返事は否。
『現段階では必ずしも誘拐したのがこの間の男とは確定できませんし、個人情報なので民間の方には開示できません。確認なら警察で行いますから』
それじゃ遅いんだーー。
焦りそうになる頭を必死で回して、とれる道を探していく。
BNPの商品ならいくらでも手を打つのに、相手が雪姫というだけで、俺は平静で居られなくなるのか。
携帯でまた別の番号を呼び出した。
『はい。……珍しいですね、城ノ内さん』
相変わらずの、無駄に色気を含んだ低い声で相手が応答する。
「緊急事態だ。説明は後でするから手を貸せ、冴木」
友人である美形医師に有無を言わせず要求する。
「お前警察関係にツテがあったよな。知りたい情報がある」
『ああ、そういうことなら水瀬かな。ちょうど今隣に居ますよ』
電話の向こうで「ええっ」と嫌そうな声が響いた。クソ、あいつ今度会ったらブッ飛ばす。
『天才美形医師の水瀬陸様でーす。じょーのうちクン、可愛くおねだりしてごらん』
「うるさい阿呆、死ね」
『うわー今世紀最大にそそられるおねだりだわ~』
くだらないやり取りをしている暇はない。
……落ち着け。俺が冷静にならなくてどうする。
あの馬鹿女のことだ。悪運なら俺の分までくれてやってる。
俺は息を吸って、自分を抑えた。
BNPの社用携帯は、社員や所属タレントがいつどこに居るか把握できるように、GPS位置検索が出来るようになっている。真野に連絡してセキュリティ会社に連絡を取ってもらったが、回答は期待に応えたものでは無かった。
『梶原ちゃんの携帯の電源が切られてて、位置はわからないそうだ。一番最後に特定したのは40分前で、場所はーー』
それに聞き覚えがあるような気がした。
最近、雪姫が仕事で行ったスタジオのすぐ近くだ。テレビ局にも近い。と考えたところで、思い出した。
ーー以前に雪姫に近づこうとした、不審者のことを。
「真野、警察に例の不審者がどこの誰か確認しろ」
あの男だ。
半ば確信を持って言った俺に、けれど警察からの返事は否。
『現段階では必ずしも誘拐したのがこの間の男とは確定できませんし、個人情報なので民間の方には開示できません。確認なら警察で行いますから』
それじゃ遅いんだーー。
焦りそうになる頭を必死で回して、とれる道を探していく。
BNPの商品ならいくらでも手を打つのに、相手が雪姫というだけで、俺は平静で居られなくなるのか。
携帯でまた別の番号を呼び出した。
『はい。……珍しいですね、城ノ内さん』
相変わらずの、無駄に色気を含んだ低い声で相手が応答する。
「緊急事態だ。説明は後でするから手を貸せ、冴木」
友人である美形医師に有無を言わせず要求する。
「お前警察関係にツテがあったよな。知りたい情報がある」
『ああ、そういうことなら水瀬かな。ちょうど今隣に居ますよ』
電話の向こうで「ええっ」と嫌そうな声が響いた。クソ、あいつ今度会ったらブッ飛ばす。
『天才美形医師の水瀬陸様でーす。じょーのうちクン、可愛くおねだりしてごらん』
「うるさい阿呆、死ね」
『うわー今世紀最大にそそられるおねだりだわ~』
くだらないやり取りをしている暇はない。