milky way【BL】
 
「──アキじゃないわよ」

「うわっ!?」


 僕の直ぐ真後ろにシズルくんが立っていた。


「失礼しちゃうわ。間違えられるなんて」


 拗ねた口調で言う彼はいつも通り高級そうなスーツを着たホストみたいな出で立ちで。

 ボードに貼られたオーダー票を見ながら「忙しそうね」と冷ややかに呟いている。


「ごめん。アキくんが帰ってきたのかと思って。どうしたの? 今日は休みだよね」

「約束キャンセルされちゃったのよ。暇だからこの前の珈琲のお礼にってコレを持ってきたんだけど」


 云って、彼がテーブルに置いたのはウェッジウッドの紅茶だった。


「それじゃ、忙しそうだし帰るわね」

「え……っ」

「……そんな顔しないで頂戴。嘘よ。暇だもの手伝ってあげるわ」


 僕はそんなに酷い顔してたのかな。

 一旦奥の部屋に行ったシズル君は、直ぐにエプロンを着けて戻ってきた。


「マスター、一組来店です。それからオーダーお願いしまーす」


 オーダー票を受け取って、デミグラスソースを添えたオムライスと、ナポリタンのパスタを同時にハルカちゃんに渡す。


「あれ? シズルさん居るんですか?」

「さっき来たんだよ」

「アキ、知ってるんですか?」

「いや、まだ……」


 アキくんが来たら……きっと大変なことになるだろうな。

 そんなことを思っていたら。
 
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