milky way【BL】
午前七時……より少し前。
扉に掛けたプレートが『OPEN』になるより早く、今日一人目のお客さんが来た。
「おはよ~……」
「おはよう、アルゼフ」
寝癖がついたままの頭を気にする風もなく、カウンターにつく。起きて間もないみたいで、何度も何度も欠伸と伸びを繰り返している。
「今日は早いんだね。予約とか入ってるの?」
彼は正面の道を挟んで斜め右側に位置するフラワーショップ『Calypha』の店長?さん。
思わず「?」をつけたのは……失礼な話だけど、余りにも彼がそんな風に見えないから。
それにきっと、アルゼフ自身、そんな自覚は余り無いんだろう。
「あー……ホントだ。まだ七時だ」
再び欠伸をしながら、僕が出したコーラに口を付ける。
「起きたらココに来るのが日課だかんなー」
朝っぱらからよくそんな刺激物が飲めるもんだ、と聞いたのは随分昔のこと。
それでも昨日のことのように思い出せる。
『珈琲のが刺激物なんじゃねぇの?』
確かに云われてみればそうかもしれない。
僕が眠気覚ましにブラックコーヒーを飲むのとそう変わらないんだろう。
けど、僕はアルゼフがコーラ(とミネラルウォーター)以外のものを飲んでいる姿を見た記憶が無い。
健康に悪いんじゃないの? と聞けば『何だって摂り過ぎりゃよくねぇよ』そんな答えが返ってきた。
それ以来、僕は彼のコーラ好きに口を挟まないことにしている。