milky way【BL】
 
 午前七時……より少し前。

 扉に掛けたプレートが『OPEN』になるより早く、今日一人目のお客さんが来た。


「おはよ~……」

「おはよう、アルゼフ」


 寝癖がついたままの頭を気にする風もなく、カウンターにつく。起きて間もないみたいで、何度も何度も欠伸と伸びを繰り返している。


「今日は早いんだね。予約とか入ってるの?」


 彼は正面の道を挟んで斜め右側に位置するフラワーショップ『Calypha』の店長?さん。

 思わず「?」をつけたのは……失礼な話だけど、余りにも彼がそんな風に見えないから。

 それにきっと、アルゼフ自身、そんな自覚は余り無いんだろう。


「あー……ホントだ。まだ七時だ」


 再び欠伸をしながら、僕が出したコーラに口を付ける。


「起きたらココに来るのが日課だかんなー」


 朝っぱらからよくそんな刺激物が飲めるもんだ、と聞いたのは随分昔のこと。

 それでも昨日のことのように思い出せる。


『珈琲のが刺激物なんじゃねぇの?』


 確かに云われてみればそうかもしれない。

 僕が眠気覚ましにブラックコーヒーを飲むのとそう変わらないんだろう。

 けど、僕はアルゼフがコーラ(とミネラルウォーター)以外のものを飲んでいる姿を見た記憶が無い。

 健康に悪いんじゃないの? と聞けば『何だって摂り過ぎりゃよくねぇよ』そんな答えが返ってきた。

 それ以来、僕は彼のコーラ好きに口を挟まないことにしている。
 
< 4 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop