心に悪夢を潜ませ
綺麗な自己犠牲を語る弟を見ることはしなかった。
杖の破片を拾いながらでもわかる。恍惚とした表情を、表す上ずった声。
洗脳されたかのように皆が一様に繰り返す、諦め。
どうせ助からないなら綺麗に散りたい、そう言わんばかりの願い。
なぜ、と考えるのすら馬鹿馬鹿しい。
ここは小さな村。
魔法使いの治める南の国の端にある辺境の地。
そこにいる私というただ一人の治癒魔法使い。
私に治せぬ病ならば、もう誰にも治せない。
市内の有名な魔法使いを呼ぶお金も手段も、この村にはない。
ならば仕方ない、やむを得ない
その結果の諦めだと今更気づいた。
「…ばかみたい」
「え?」
「ううん、おやすみ」
それなら、どれだけ頑張っても結果は同じじゃない。