心に悪夢を潜ませ

 「…私は戦争で得られるものが本当に必要なものなのかわかりません」

 「ばかだなー…自分の大切なモノの安息に決まっているだろう」

 大切なモノの安息?

 驚いてライヒェさんを見れば、つまらなさそうに草を蹴散らしながら説明してくれた。

「西の国の野蛮さは昨日知ったんだろ?お前の大事に思う人間が昨日の夜のような目にあうかも知れないと何故言い切れるんだ?西国は戦士の国、更なる力を求め大切な人を刀の切れ味を確かめる練習台にされないと言い切れない。

東の国は魔法とは違う人知を超えた力を使う種族の治める国だ、何をされるか想像もできない。

北の国には奴隷制度があるから、もしかしたら奴隷にされるかもしれない。家畜にも劣る扱いを受けながらも生きながらえる屈辱なんて僕には想像も出来ないけどね。

そんな風に考えたことはないのか?奪うか奪われるか、命も生も名誉も人権も権利も金も食い物も何もかも、奪われないために、守るために、奪う。誰かのためではなく、自分のために、自分の為にではなく守りたい誰かのために、僕の知っている魔法使いは皆そのために戦いに赴く。人を殺したくて出てくるやつなんかいない。国を本気で思って出てくる奴は王の周りのほんの一部だ。みんな守りたい何かのために戦う。その為の力だと僕は思う。そのための魔術だと僕は思うけどね」

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