心に悪夢を潜ませ
「…お二人も、何かを守るために身を置いているんですか?」
下手な質問だったと、ライヒェさんの冷たい目を見て後悔した。
目を覆っているエカイユさんは表情こそわからないが同じ目をしているに違いない。
「奪い合うことはとても酷いことです。それを好んでしているはずがない」
エカイユさんは私の家に顔を向けた。
「私達二人は治癒魔法が使えません、だからあなたの弟さんを治すことは出来ない。それを苦しく思う心を私達はもっています。戦火に身を置くからといって、悪逆非道の殺戮人形になれるはずがない。魔法使いの前に人なんです、私達は」
胸に手を置き、エカイユさんは俯いた。
「いいお返事を聞かせていただきたいと思っています」
「まあ、田舎に身を置く隠居生活も悪くないんじゃない?」
盛大に村をバカにしながらもライヒェさんの目は悲しそうに朽ちた草を見つめていた。